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畠山重篤氏らの「森は海の恋人運動」の経験を有明海の再生に向けた取り組みに

第1回有明海再生講演会開催される

10月30日(土)午後、柳川市三橋町公民館において、第1回有明海再生講演会が 開催された。これまで多くの同様の講演会が有明海沿岸各地において行われてきたが、 この講演会は、これほどまでに疲弊した有明海を元に戻すには、小手先の対応ではなく、 その大元から見つめ直すことにより、流域全体の共同作業として再生した有明海を 子供や 孫に送り届けることを目的にした点において、これまでの取り組みとは全く異質と言える。

具体的には「森里海連環に基づく有明海再生への道」に踏み出す出発点として 開催された。 また、第1回講演会としたのは、この深刻な有明海の再生には じっくり腰を落ち着けて、筑後川流域全体(源流域から筑後川河口沖まで)の再生を 目指す必要があり、今後5〜6年間は毎年同様の趣旨で、筑後川流域各地において 開催する予定に基づいている。

当日は、秋のいろいろな行事と重なり、参加者は110名前後と必ずしも多くは なかったが、 九州各地はもとより、遠く宮城県、埼玉県、東京都、静岡県、京都府、 広島県など九州以外からの参加者も多く、有明海再生は日本の沿岸漁業と沿岸環境 再生の“試金石”として、全国的に注目されていることが確認された。 多くの参加者からは、このような講演会がこれだけの人数ではもったいので、 次年度には時期を考え、事前の広報を十分にした上で開催して欲しいとの要望がなされた。

この第1回有明海再生講演会は、この海で30年以上にわたりここにしかいない エツ・アリアケヒメシラウオ・ヤマノカミなどの特産稚魚の生態と、それを支える 河口域生態系の仕組みを研究し続けてきた田中 克(京都大学名誉教授)の、 これまでの研究成果を基礎にして有明海再生へいくらかでも貢献したいという思いが、 地元でNPO法人有明会や矢部川をつなぐ会などで活動されている多くの皆さんの ボランティア的支援に結びつき、手作り・手弁当で実現した。 この点でも、 これまでの講演会とは性格の異なるものと言える。

講演会は、松富士さん(日本野鳥の会会員)の司会のもと、 第一部では「阿蘇山が有明海特産稚魚を育む−母なる川筑後川」(田中 克)に続き、 深海から砂漠や南極までを駆け回り生命の仕組みを探る広島大学長沼 毅准教授が 「干潟再生の“秘密兵器”:溶存鉄の効果」と題して、フルボ酸鉄が有明海再生につながる 可能性を話題提供された。講演の最後は、1989年以来宮城県気仙沼において、 “森は海の恋人”運動を続け、地域の環境意識を大きく変える中でカキやホタテガイの 養殖を見事に再生させたカキの森を慕う会代表畠山重篤さんが「汽水に生きる− 森が海を育む」を豊富な経験をもとに講演された。

続いて第2部では、筑後川の流域一体化を進める鍋田康成さんと財津忠幸さん、 ならびに 熊本県緑川で同様の活動を進めておられる浜辺誠司さんが活動報告された。 その後講演会に参加いただいた皆さんから感想や意見を募った。有明会再生に向かって、 小異を捨てて大同につき、今後も講演会などを開催しながら森里海連環の視点で 再生に取り組んでいくことが確認された。具体的な成果として、溶存鉄を使って 干潟の再生実験を行う複数の漁師さんが現れるとともに、講演会を縁の下の力持ちとして 支えた多くの地元の皆さんが元気を得て、今後もこのような取り組みに積極的に 関わる流れが生まれた。

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実行委員長 田中 克

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有明海に影響を与える矢部川流域の環境を守るには山仕事で食べていければよい。そう思って活動している有明海の漁師とそれに賛同する住民のNPO法人です。海苔堆肥づくり、椿油をとる薮椿の森、和蝋燭をつくる櫨の森づくり、有明海での潮干狩りやタコ釣りなどを行っています。

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